

「At Real Scale - パク・ドゥヤング 鈴木隆 前田信明 - 」
GALLERY KTO所蔵のアートコレクションから韓国のGALLERY SHILLAで活動する3人の作家の作品を展示します。
パク・ドゥヤング、鈴木隆、前田信明の3人は、それぞれに異なる文脈・社会的背景・問題意識を持ちながらも、生涯を通して美術という手法を用いて、ある種の共通の質感が作品上に現れていると考えます。それは、作品の持つ物質的かつ積層されたマテリアルと、その画像=imageが示す記号的な色面です。
現代の社会において、スマートフォンが一般化し、誰もが皆小さな液晶画面で写真を撮るようになって近年、多くの芸術家たちもまた同様にSNSやオンライン上での活動という領域が拡張されてきました。芸術家たちは自身の作品写真をネット上に公開し、さらに鑑賞者もまた同様に美術館やギャラリーで撮影した作品写真をネット上に公開し、実際に目で見るよりも先に作品の図像のみが知られるような側面もあります。しかし、その小さな液晶からは得ることのできない作品の本質は多岐に渡ります。特に今回展覧する3人の垂直・水平・対角線による幾何学的な作品は、写真で見た時にはリアルなサイズは巨大なのか極小なのか身体的実寸サイズが分かりませんが、その不確定さゆえに手元に有る物理的なモノ性は確固たる必然的なサイズをもって存在させる作品と言えます。
時代は遡り、近代以降の芸術において様々な作品が"空間"を問題にしてきました。美術史や制作の境界、主義など分割される空間にイメージは絡み合っていきます。そして芸術はいつしか描かれたものを見るより思考のコンセプトを重視するとなって以来、絵画、彫刻、パフォーマンス、それ自体が所有する領土と言えるキャンバス上の空間、彫刻の素材と台座、劇のシナリオと舞台から自由になり「空間の概念」が重要になりました。ついに現在の芸術では、コンセプトが重要視されるだけでなく、さらには作家間のコラボレーションやギャラリーの連合だけでなく、1人の作家の中において素材やメディアのジャンル分けも無効となり、自身の複数の時期の主張が溶け合い積層されていきます。
KTOではこの個々の作家が自身の過去から現在までを積層し続けてきた現在地点を見ていきます。パク・ドゥヤングはストライプパターンを自分の美術として選び描き、鈴木隆は対角線で赤や青に塗り分けた矩形の作品を、前田信明は垂直と水平のラインに沿って水と絵具を何十回と重ねた純粋抽象を見せます。
そして彼らの過去から積層してきた表現がお互いに溶け合い、1つの世界をギャラリー内部で作っていきます。そこから見えてくるのは、世界を創り出す事でよき本質を生み出すという画像=imageの積層により、物質的に手元に有ることの確証とも言える、物理的なサイズを持ち合わせたキャンバス型のオブジェです。ここから世界の未来も見えて来るでしょう。原寸大の身体感覚でしか感受し得ない作品が持つ領域を体験してください。
GALLERY KTO 田中利孝


