佐藤舞梨萌《透明な青い鳥》
2020
oil on canvas
652x530mm
佐藤舞梨萌《青い鳥の音色》
2022
oil on canvas
530x455mm
しばらく、この絵を見ていて、自然に絵を描いていた子供の頃を思い出しました。山や川や野原で遊んでいた時に、不思議なものに出逢ったという感覚。川で赤い鳥を見たことや、山で透明感のある精霊のような存在を感じたこと。そんなことが、たくさん記憶に残っています。この「透明な青い鳥」の作品をきっかけに、個展の構想をしましたが、結果的に約3年間を要しました。 混沌から混乱のこの時代に、わたしは再び子供になって、絵を描くことに希望を見出そうとしたのだと思います。 2023年 佐藤舞梨萌 それは、花や自然に在る生命の神秘や真理を追求する佐藤の意識が、色彩と筆致を自律させることで、より一層の純粋さを表出し、抽象化することで、作家の世界観がより象徴的になってきたといえます。 そして2020年以降、コロナ禍の状況下で描かれた作品は、複雑な色彩のハーモニーを奏で、静謐さと触覚的なうねりが、自在に画面を飛び交い、「不思議な感覚=Sense of Wonder」が有機的に一体となった、佐藤舞梨萌独自の絵画表現へと昇華してきたように思われます。 また、昨年GALLERY KTOで開催した個展『 たましいの庭 』では、サブライム(崇高)をテーマに、このむき出しにされた世界の混乱の内で、ひたむきに自らの精神と向き合う姿勢を通して、改めて絵を描くことの意味の深さを問いかけました。 今回の個展は、佐藤が2020年に描いた〈透明な青い鳥〉をきっかけに構想されました。 新作を中心にしたこの時代を見据える佐藤の眼差しは、前回の個展からさらなる展開を見せ、その表現はますます自由に、純粋に、崇高な場所へと飛び立とうとしているかのようです。 個展のタイトルでもある『透明な青い鳥』とは、佐藤舞梨萌の現在の感情を暗喩しているに違いありません。
2020年、夏のある日、ふと、今まで降りたことのない駅に降りてみました。そこから見える小さな山の樹々の狭間に、青い鳥がちらちらと見えたような気がして、次の日、わたしは衝動的にその山を描きたくなり、その絵に〈透明な青い鳥〉というタイトルを付けました。
佐藤舞梨萌は、2007年の初個展から、花や花のある風景を一貫して描いている画家です。初期には、ロマン主義絵画を思わせる具象画を描いてきた佐藤は、2017年の個展『 BLOOM 』を境に、色彩と筆致を際立たせる半抽象的は表現へと変化してきました。
佐藤 舞梨萌
愛知県生まれ
2005年 講談社フェーマススクールズ卒業
個展
2007年 「再生」 andzone, 東京
2008年 「光の場所」 The Artcomplex Center of Tokyo , 東京
2009年 「太陽の夢」 The Artcomplex Center of Tokyo , 東京
2010年 「月の詩」 The Artcomplex Center of Tokyo , 東京
2011年 「麗らかな春の日に」 The Artcomplex Center of Tokyo , 東京
2012年 「エメラルドの風 」 The Artcomplex Center of Tokyo , 東京
2013年 「降り続ける生命」 The Artcomplex Center of Tokyo , 東京
2014年 「ホシノマタタキ」 gallery 福果 , 東京
2015年 「 追いかけた夢」 The Artcomplex Center of Tokyo , 東京
2016年 「サクラ・テオリア」 The Artcomplex Center of Tokyo , 東京
2017年 「 BLOOM」 art space kimura ASK? , 東京 企画:西村智弘
2020年 「Sense of Wonder」 art space kimura ASK? , 東京 企画:仲世古佳伸
2022年 「たましいの庭」 GALLERY KTO , 東京
主なグループ展
2016年 「花 ドルチェ 問い/」 Gallery MARUHI (主催) , 東京 ゲストキュレーター : 仲世古佳伸 参加作家 : 佐藤舞梨萌、高橋大輔、中里伸也
2019年 「昇華のモルフォロジー 佐藤舞梨萌 / 山口真和」 KOMAGOME1-14 cas , 東京 企画 : 仲世古佳伸 , キュレーション : 西村智弘 , 協力 : O JUN
2021年 「花、あたらし/12Flowers」 art space kimura ASK? , 東京 キュレーション:仲世古佳伸
2022年 「世界の揺らぎを知覚する、音楽に共振する絵画の今」 art space kimura ASK? , 東京 企画 : 倉林靖・仲世古佳伸
アートフェア
2022年 「アートフェアアジア福岡2022」 ホテルオークラ福岡 , GALLERY KTO , 福岡