先日、シェイクスピア(1564-1616)のソネット(14行の押韻構成詩)をモチーフにした拙作『ソネット12・violet』を倉庫で見つけました。書籍の中で花探しをする旅の作品シリーズで、この作品は2011年3月8日から29日の個展にあわせて制作しました。花の白黒シリーズが中心だった展示の隅にこの作品(見せ方が少し違いますが)を展示していたことを思い出しました。会期中に東日本大地震があり私自身に大きな被害はありませんでしたが、何となく保留してしまったことがあるように思います。
この詩の中に「violet(スミレ)」が出てきます。スミレが盛りを過ぎて枯れていくさまを「時」の無常さとして、そしてこの詩の全体も、抗えぬ「時」を詠んでいます。また、『ハムレット』(1601年頃)ではハムレット殿下の愛情が一時の気まぐれでせっかちに咲いてすぐに萎える束の間のものであり、芳香で美しく儚いスミレのようだというように表現しています。
チューリップの原種がトルコからヨーロッパに持ち込まれたのもシェイクスピアが生きたこの時期です。世界一周航海などで様々な地域から草花が持ち込まれ、それまでの薬草としての植物から楽しむ園芸へと発展しました。草花や果実はシェイクスピア作品の印象的な小道具として表現されています。
今回の展示『ソネットのスミレ』は、再会したソネット12を起点とし、2011年とは景色の違う自分と、変わりゆく世界を確かめるように「時」を見つめ直してみたいと思います。
2022年3月 坂田峰夫
坂田峰夫
1966 東京に生まれる
東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒
個展 ( 1994~ selected )
2022 『ソネットのスミレ』/Gallery KTO,原宿・東京
2020 『lux-spectrum』/GALERIE SOL, 銀座・東京
2019 坂田峰夫展『PHOTOGRAM』/Monochrome Gallery Rain ,東京
2017 『百合と蟻』/20202, 東京
2017 井村一巴 大塚勉 坂田峰夫/art&spaceここから,東京展(鷹見明彦企画)
2016 MEETING POINT 2016 /府中市美術館市民ギャラリー(府中市美術館企画),東京
2016 友人作家が集う-石原悦郎追悼展
"Le bai" , adagio cantabile/ ツァイト・フォト・サロン, 東京
2016 パースペクティブ-光 Perspective Exhibition-Light/GALERIE ANDO, 東京
2015 坂田峰夫展/GALERIE SOL, 銀座・東京
2014 FLOWERS/Gallery OUT of PLACE TOKIO, 東京
坂田峰夫展/GALERIE ANDO, 東京
2013 202リビング/20202, 東京
studio-gallery/MUSÉE F, 東京
2012 LANDSCAPE/TOKIO OUT of PLACE, 東京
坂田峰夫展/GALERIE ANDO, 東京
2011 坂田峰夫展/GALERIE ANDO, 東京
2009 -lux-/TOKIO OUT of PLACE, 東京
坂田峰夫展/GALERIE ANDO, 東京
2008 坂田峰夫展/GALERIE SOL, 銀座・東京
2007 坂田峰夫展「FLOWER」/TIME&STYLE EXISTENCE, 東京
2006 坂田峰夫展/ギャラリー覚, 東京
坂田峰夫展/GALERIE ANDO, 東京
2005 FLOWER/ギャラリー覚, 東京
FLOWER/表参道画廊, 東京
2004 FLOWER/ギャラリーMAKI, 東京(西村智弘キュレーション)
2003 FLOWER/ギャラリー覚, 東京
1999 坂田峰夫写真展/ツァイト・フォト・サロン, 東京
1998 坂田峰夫展/GALERIE SOL, 東京
1995 TENKAIBANA 2 展/ギャラリーKIGOMA, 東京
1994 TENKAIBANA 展/ギャラリーKIGOMA, 東京