

私は道の上で、
そこに属さないものに出会う。
息を失ったもの、
捨てられ、取り残されたもの。
それらは地面に触れながら、
どこにも属していない。
私は立ち止まり、
それに像を与える。
像となったそれらは、
汚れでも、死でもなく、
沈黙した存在として、
こちらを見返す。
その瞬間、
二つの場所が重なり、
境界は形を持つ。
私はその形を覆い、
時間の中に留める。
2025年 李旭
【タイトル解説】
**Metaxy(メタクシー)**とは、古代ギリシャ語で「〜と〜のあいだにある状態」を意味する言葉です。
それは単なる中間点や通過点ではなく、異なる領域が分離しきれず、互いに関係し続けている状態そのものを指します。
プラトン哲学において Metaxy は、神と動物(あるいは理想と現実、完全と不完全)のあいだに位置づけられる存在のあり方を示す概念です。
人間は神のように完全ではなく、かといって単なる動物でもない。
常に二つの領域のあいだに引き裂かれ、同時に結びつけられた存在として理解されます。
この Metaxy 的な状態は、どちらか一方へ到達することによって解消されるものではありません。
むしろ「未完であること」「あいだに留まり続けること」そのものが、
存在の条件として肯定されています。
本展において Metaxy は、内と外、現実と仮想、生と死、主体と像といった対になった概念同士を分ける境界であると同時に、それらが接触し、摩擦を起こし、固定されてしまった場所を示しています。
ここで扱われる境界は、何かを越えるための門ではありません。
複数の領域が掴み合ったまま離れきれずに残された、関係の結節点としての境界です。
本展の彫刻は、その Metaxy 的状態を一時的に物質として留めたものです。
李旭
1992年東京生まれ
2018年武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻彫刻コース修了
株式会社DADA”BUSHOUSE”プロジェクト制作メンバーとして2019年まで活動
2016”CCC AWARDS展” 代官山T-SITE GARDEN GALLERY
2017”SIYOTEN” クリエイティブオフィス司3331
2017彫刻と対話法Ⅲ思い通りにするーをするか” 府中市美術館
2019北海道訓子府町における彫刻作品公開制作及びワークショップ(恒久設置)
2020株式会社SoVa(東京)に作品「だん・だん」を設置
2022”CARt-SAITAMA2022”参加
2023"ホリデイ・イン・ラグーン"GALLERY KTO 原宿