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インベカヲリ★

たしか雨が降っていたから、

2022.07.16.Sat ~ 08.02.Tue
GALLERY KTO 原宿
13:00 ~ 18:00 closed on Wed ~ Fri.
ACCESS 〉〉
インベカヲリ★《よき忍び込み-1 2003》

353×530mm
タイプCプリント
インベカヲリ★《 “今ここにいる人”の演技 2019 》

420×530mm
タイプCプリント

2 0年前に写真をスタートした当初、作品づくりは私にとって症状だった。自己主張で、自己確認で、表現であり発露。初期のころに、セルフポートレートが多かったのは、それが理由だ。それからだんだんと他者への興味に移り変わり、今ではすっかり、人の「語り」に魅了されている。その「語り」を聞くことで、他者という存在を写している。対象が自己か他者かで、やっていることは今も昔も変わらない。
人の心は、宇宙の果てや海の底と同じで、まだ誰も知らない。どこまで近づいても触れることはできないし、時間とともに流動していく。だから飽きることがなく、探求心が向かう。
あのころ、自分はなにを考えていたのか。初期衝動をふりかえってみると、たしか雨がずっと降っていた、というような心象風景しか思い出せない。過ぎ去ってしまえば、記憶は恐ろしく軽い。
私は「写真」を撮るという意識すらなかったし、それは今でも同じはずだ。けれど、写真賞などを貰っているうちに、すっかり「写真」になってしまった感がある。だから他所で「症状」のような作品を目にすると、ああ、そこに戻らないといけないな、という気持ちにもなったりする。
もっとも他者が被写体であれば、両者とも表現者だ。特に最近は「語り」のほうに比重が傾き、文章化するほうが楽しいくらいでもある。話を聞いて、私が反応する部分も変わってきた。また、これまでずっとネガフィルムで撮影していたけれど、フィルムの値上がりによりデジタル写真に切り替わった。カメラが違うと、撮影時の感触も見え方もだいぶ違う。
本展では、写真をはじめたころの初期作と、新作と、その間の作品を並べている。見た人が気づくか気づかないかにかかわらず、私の中では時間や時代、出会う人によって変化していく。  ここへきて、ふと後ろを振り返ってみることにした。

インベカヲリ★「たしか雨が降っていたから、」

協力:赤々舎

インベカヲリ★
1980年、東京都生まれ。写真家。短大卒業後、独学で写真を始める。編集プロダクション、映像制作会社勤務などを経て2006年よりフリーとして活動。13年に出版の写真集『やっぱ月帰るわ、私。』で第39回木村伊兵衛写真賞最終候補に。18年第43回伊奈信男賞を受賞、19年日本写真協会賞新人賞を受賞。写真集に『理想の猫じゃない』『ふあふあの隙間』①②③がある。ノンフィクションライターとしても活動しており、『家族不適応殺 新幹線無差別殺傷犯、小島一朗の実像』で第53回大宅壮一ノンフィクション賞候補に。著書に『「死刑になりたくて、他人を殺しました」無差別殺傷犯の論理』『私の顔は誰も知らない』など。

作者HP : http://www.inbekawori.com/
Twitter:@kaworikawori

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