《儚の物語》(第1日)
蝋、加温展示台
サイズ可変
2021
液晶
ガラス
サイズ可変
渡辺晴男
1947年 東京生まれ
1972年 東京農工大学工学部工学系研究科修士課程修了/分子間相互作用
日本化薬(株)入社・薬品研究所/包接化合物
1973年 凸版印刷(株)中央研究所/グラビア印刷システム(画像工学)
1977年 シチズン時計(株)技術研究所/液晶ディスプレイ(画像工学)
1990年 アフィニティー(株)を起業し現在に至る・代表取締役
自律応答型調光ガラスの研究開発と製造販売、太陽電池モジュールの研究開発、現在は主にカラー液晶(構造色)による表現形成の研究
「入選と受賞歴」
1992年 The Corning Museum of Glassの「New Glass」 に入選(米国・世界公募100点選抜)
1994年 自律応答型調光ガラスの基礎研究で「省エネバンガード21・資源エネルギー長官賞」を受賞
2002年 自律応答型調光ガラスの開発で「日経地球環境技術賞」を受賞
2005年 The Corning Museum of Glassの「New Glass」 に入選
人は五感をもちます。視覚は絵画、オブジェ等、聴覚は歌、楽器等、味覚は料理等、臭覚は香、香水等があります。触覚は・・・。
視覚芸術は「形と色」からなります。私の作品は「色」です。
色には、染料、顔料等による呈色と構造色(螺鈿、玉虫等)からなる発色の2種類があります。本作品は新しい構造色からなる色面画となります。この構造色からなるカラー液晶を創作し、かつ絵の具のように面的に表現しうる技法を確立しました。本作品は一対の板ガラス間にカラー液晶を薄く内包してなる積層体です。
そこで、この新しい構造色で新しい表現形成を研究することにしました。また、本作品はカラー液晶による特徴をもち、視角、温度による変色現象(鑑賞位置、気温等で変化)があります。その結果、“環境アート”、“先端科学技術アート”とも言える新規な現代アートへの試みとなっています。
李菲菲 (リフェイフェイ)
中国遼寧生まれ
2017 東京芸術大学大学院 油画第3研究室 修了
2022 東京藝術大学大学院博士後期課程 美術研究科美術専攻 修了
日本に留学期間で、様々な展示会とアートプロジェクトに出展し、第11と12回藝大アートプラザという展示会においで、多数の賞を受けた。現在は日本と中国に滞在し制作しながら、インスタレーション作品による制作活動に専念している。
ー「儚の物語」の作品解説 ー
「消滅、虚無」の臨界に近づいていく様態を「儚の進行態」と私は呼ぶ。「儚 の進行態」は消失後に無に帰すわけではない。新たな別の形の存在に転化、継承され、見た目は違っても新たな物語を生み出す。それは「終わりの始まり」ではなく、「始まりの始まり」でもある。
五重塔は唐から日本に伝わったが、いつしか日本独自の特徴を持つ独立した 建築様式となった。 建築は記憶の器である。中国から来日した私にとって五重塔は自身の人生を象徴するものでもある。私が個人の内面を象徴する五重 塔を融かすのは、自我を溶かし、また環境と融合させるためである。 環境に よる再構築を受け入れる事は、消滅の先の新たな可能性を示唆する。
聖なる城は自分の姿を失う事で姿を現すのである。過去の時間は去っていき、未来は凄まじい勢いで押し寄せてくる。我々は物事を失い続けるとともに、新たな物事を生み出している。熱という潜在的なエネルギーは混沌と流 動をもたらす。この作品では加熱のタイミングをランダムにする事で、作品の変化を不規則に進行させている。時の一方向の流れの中で作品の変化はランダムに、しかし確実に進行していく。五重塔が融けていく不可測的な変化を通して、我々は「儚の進行態」の顔を見ることができる。それは、成りか ける者・存在する者・過去の者の三者の顔を同時に持つ顔であり、 我々の未来の姿でもある。