袋小路の記憶
展示空間であるBLUE DRESS は1960年代、イギリスで花開いたモッズカルチャーに心酔したオーナーがそのスタイルを受け継ぎ自らデザインした服を主に扱っている。渋谷の裏通りの袋小路の半地下に隠れるようにして構えた店は、生地の色や質感なのかどこかノスタルジックな雰囲気が漂う。モッズについては映画「さらば青春の光」(原題:「四重人格」1979年)を見たぐらいしか知らなかった。映画は英国政府の国有化などによる産業保護政策で経済不振が進むなか、階級格差を背景にしたモッズの若者たちの日常の光と影が描かれている。もっとも、自分の興味は映画のなかのイギリス南部の海沿いの街ブライトンの様子でもあった。当時、1992~1994年までブライトンの大学に在籍し絵を学んでいた。玉砂利の海岸を歩く音、冷たい冬の海。
映画の長いラストシーンでは主人公が盗んできたスクーターで白く切りだった崖の上を夕日が照らされた海を背景に暴走する。そしてついに転落する/しない で終わる。2022年の渋谷の街の一角で再び海外の遠く離れた街の日々が蘇るがそれは個人的なことに過ぎない。しかし展示は間接的にその記憶も含めて構成されるだろう。2022年6月 平田星司
1967年東京生まれ
92年東京理科大学第2部物理科卒業 渡英
95年 “Home Truths” South Bank Photo Show (Royal Festival Hall / London) *prize winner
94年ブライトン大学美術部絵画科卒業 首席 96年The Slade School of Art 大学院絵画科修了
事物の表面への関心から皮膜や皮膚としての絵画、オブジェに直接描く絵画的な静物などの作品はカテゴリーそのものを問う、または視覚を宙吊りにする。
個展・グループ展の傍ら2010年、中根秀夫とのユニット「エステティック・ライフ」をスタートしこれまで3回の展覧会の企画を行う。
また2013年には香港M+企画による「Inflation!」でWai Ping Tam の制作コーディネータをする。
《おもな個展》
2018-2021 ガルリ・アッシュ/東京
2017 異種同形体 (企画:大橋紀生) ポスト・ギャラリー4GATS/東京
2015 化体説−静物による ギャラリー現/東京
2013 Unbound: Possibilities in Painting 現代ハイツ・ギャラリーDEN & .St/東京
Still Life & Natura Morta ガルリ・ソル/東京
2012 ルクレティウス 藍画廊/東京
2011 Various Skills vol.3 平田星司 展 トキ・アートスペース/東京
2010 干満な反復 現代ハイツ・ギャラリーDEN/東京
エステティック/ライフ 中根秀夫 平田星司展 トキ・アートスペース/東京
2009 reawake ギャラリー現/東京
2008 界面 藍画廊/東京
2007 赤と黒 ガルリ・ソル/東京
《おもなグループ展》
2019 秋の日−Days in Autumn 塩崎由美子 平田星司展 ギャラリーナユタ /東京
水平試行 トキ・アートスペース/東京
2018 はるかな時のすきまで − ephemeral / eternal 旧田中家住宅/埼玉
皮膜の形相 秋山潔 平田星司 中村陽子展 宇フォーラム美術館/東京
2017 海のプロセスー言葉をめぐる地図(アトラス)第6回都美セレクショングループ展 東京都美術館
2015 エステティックライフⅡ― automatic(企画:中根秀夫 平田星司) トキ・アートスペース/東京
2009 アートプログラム青梅「空間の身振り」 旧青梅織物工業協同組合/青梅
https://seijihirata.tumblr.com