大西晃生《孤立》
Acrylic gouache on canvas
1940×1120mm
大西晃生《食事》
Acrylic gouache on canvas
530×455mm
I'm tired
仕事を終え終電で家に帰り、ふと椅子に掛けた際、風船の空気が抜けるように、口から息がスーッと漏れ出ていくのがわかった。
意識がぼんやりして、まるで糸の切れた操り人形のようにくたくたになってしまう、そんなときがあった。
目の前には自炊する元気もないので松屋でテイクアウトした牛めしと自販機で買ったお茶。
安くて便利なためにほぼ毎日そういうものを消費してしまう。
ゴミ箱には、ここ数日で捨てたペットボトル、プラ容器、レジ袋などが溢れそうになっている。
iPhoneを手に取りInstagramを見ながら牛めしを食べる。
ストーリーズには以前、海外の通販サイトを見ていたからか フォローしているアカウントの投稿に挟まれて 海外のファッションブランドの広告が出てきた。 その広告の洋服が気になって、 買うつもりはないがサイトに飛んだ。 一通り商品をみて満足したのか、 iPhoneを閉じた。
さっきまで考えていた事はもうほとんど忘れた。 気づいたら時間は午前3時ごろになっていた シャワーを浴びて、頭を乾かして、歯を磨いて、アラームをセットして、布団に入って..
目を瞑って寝ようとすると頭の中で独り言がはじまる。 布団の中でそんな事を思いつつ、さっき食べた牛めしが消化され、お腹の中でぐるぐると鳴っている。 起きたらまた満員電車に揺られ、会社に向かいくたくたになるまで仕事をする。 体から空気の抜けていく感覚と共に布団に沈んでいく。
今日も疲れた、おやすみなさい。
大西晃生
2021年春、 2年勤めていた会社を辞めアーティストとして生活していくことを決めました。
大きな理由は2つ。
1つは作品制作に集中したいという事、もう一つは現状の労働や生活に疑問を感じた事でした。
このまま会社の仕事を続けて将来的に何か変わるだろうか?
それを確認するように悩みはポツポツ出てくるものの、一つひとつに対して深く悩む余裕は当時は無かったと言います。
会社を辞めてからしばらくして、料理に時間をかけるようになったり、他人からのメッセージの通知にイライラしてしまうことがなくなり、もっと根本的にこの社会のシステムについて考えてみる必要があると思いました。
私たちが生きる社会は資本主義社会です。
資本主義社会において個人は自由に利潤を追求し、それよって競争が発生し、経済的な格差が生まれます。
商品は貨幣によって交換されるように、労働者の労働力もまた商品化され、労働力との交換で賃金が支払われる。
ドイツの社会心理学、精神分析、哲学の研究者であるエーリッヒ・フロム (1900-1980)は「愛するということ」の中で「現代」人は自分自身からも、仲間からも、自然からも疎外されている。現代人は商品と化し、自分の生命力をまるで投資のように感じている。」(エーリッヒ・フロム著、鈴木晶訳 「愛するということ」 紀伊國屋書店、2018年、 131 )<br>
と問題視しています。
現代は物が溢れ、何でも手に入る大量生産大量消費型の社会になり日本では明治維新以後、 士農工商制度が廃止され資本主義の基礎が築かれていきました。
例えば資本主義システムは、物やサービスが十分でなかった戦後日本においては、よく機能したかと思います。
しかし十分過ぎるほどに発展した現代では激しい競争が行われ、2020年以降はコロナ禍により社会が疲弊し、経済的な格差は顕著にあらわれています。
自分には今、人の姿がこう見える。
表面は立派で綺麗で清潔、しかし中身が空洞で、 自分の価値を他人に求め、型抜きで量産されたような無機質な人の姿をした皮がど こかで聞いたような事を喋っている。
それは何だか可笑しいような悲しいような情けないような.. なんとも言えない気持ちが整理されず頭の中で散らかっている。
大西晃生
1996年生
出身地 : 岡山県
最終学歴 : 2019年 京都精華大学デザイン学部卒
■主な個展■
2021
"paper craft (human)" ギャラリーkto 東京
"意識のコンテナ" Alternative Space yuge 京都
"still life" ギャラリーkto 東京
2020
"live coverage" KUNST ARZT 京都
■主なグループ展■
2021
"ディスディスプレイ" CALM & PUNK GALLERY 東京
2020
"中山いくみ・大西晃生 二人展 < 貌 >" ギャラリーkto 東京
"グランドクロス" 京都精華大学本館ギャラリー 京都
2019
"ALLNIGHT HAPS 2019後期 Kangaru" HAPS 京都
"孤独と連帯" プライベイト
2018
"CAF賞2018" 代官山ヒルサイドテラス 東京
■受賞歴■
"シェル美術賞2020" 入選 (2020)
"CAF賞2018" 入選 (2018)
■パブリック・コレクション■
"前澤友作コレクション"