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平田星司

Root 2 - 植生遷移の森のほうへ

2023.05.13.Sat ~ 05.23.Tue
GALLERY KTO 原宿
13:00 ~ 18:00 closed on Wed ~ Fri.
ACCESS 〉〉
平田星司《Root 2 - No. 3 》

2023
枝、サンドペーパー
415mm x 515mm
平田星司《Root 2 - No. 6》 

2023
枝、サンドペーパー
415mm x 515mm

2018 年に「Root」と題した、拾い集めた小枝を鉛筆や木炭のようにして紙やすりの上に描く作品をつくった。描いたのは木の根元のあたりで、木の先端である枝との対照をなす。イメージは紙やすりに残った木屑と傷からなり、描くほどに小枝は短くなる。それは物質からイメージへの移行や置き換えともいえるが、描くことの抵抗という意味では鉛筆と紙、あるいは筆とキャンバスとの関係とさほど変わりはない。何かを得るために何かを失うことは同じだ。作品は額に入れ、その下に小枝をピンで留めた。今回の展示では紙やすりのサイズを大きくし、小枝も額の中に入れた。それにより小枝は額との空間的な関係からイメージに寄り添うような内的な関係に変わった。原宿駅からギャラリーへの道のりは表参道を下り、螺旋を描くように左折が続く。そしてギャラリーの展示スペースはその極点にあたる。この道行きのせいか、ある時、賑やかな駅前と反対側の明治神宮の木々の存在に気づいた。 境内に入ると午後の光の中で木々は森厳として深い 陰影を保ち、さながら太古からの原生林のようだった。後にそれは 1920 年代当時、専門家らの最新の知見をもとに造られた人工の林だと知ったが、中でもドイツの森林学者、H・フォン・ザーリッシュの「森林美学」(1902)の影響があるとされる。著作の中でザーリッシュは崇高を源流とするロマン主義の美の観念を、合理的な森林の運営や管理にまで拡げている。ともあれ内苑の造営は日本における近代造園学の発祥ともいわれている。植生遷移(Succession)とは生態学の言葉で、植物の環境が長い時間をかけて別の環境に変化していくことをいう。内苑の森は 100 年かけて人工的に獲得した新たな循環のなかに置き換わっている。また、これ以上の変化が起こりにくい状態を極相林=Climax といい、そのためか境内では落ちている木の葉一枚、小枝一本すら持ちだすことは禁じられている。境内を出て隣の代々木公園のほうにまわると、明るい早春の日差しのなか園内は人々で溢れていた。学生らしい女の子たちが楽しそうにダンスの練習をしている。後ろには境内との境界に設けられた柵が見えた。柵に沿ってしばらく歩きながら小枝を拾った。

2023年4月 平田星司
Root 2 − 植生遷移の森のほうへ / Root 2 – Towards Forest Succession

平田 星司 / Seiji HIRATA

平田星司
1967年東京生まれ
92年東京理科大学第2部物理科卒業 渡英
95年 “Home Truths” South Bank Photo Show (Royal Festival Hall / London) * 3席受賞
94年ブライトン大学美術部絵画科卒業 首席 96年The Slade School of Art 大学院絵画科修了

事物の表面への関心から皮膜や皮膚としての絵画、オブジェに直接ペイントする絵画的な静物などカテゴリーを宙吊りにした作品の多くは均衡と崩壊を孕みながら、ある可能性を提示している。個展・グループ展の傍ら2010年、中根秀夫とのユニット「エステティック・ライフ」をスタートしこれまで3回の展覧会の企画を行う。また2013年には香港M+企画による「Inflation!」でWai Ping Tam の制作コーディネータをする。

個展
2022   離脱する色彩 – あるいはphoton ガルリ・アッシュ/東京
       袋小路の記憶   Bluesdress Substitute/東京
2021   線の手触り 崩れゆく風景 ガルリ・アッシュ/東京
2020   バロック的な庭師 ガルリ・アッシュ/東京
2019   One Shot Measure & Other Objects ガルリ・アッシュ/東京
2018   Root  ガルリ・アッシュ/東京
2017   異種同形体 (企画:大橋紀生) ポスト・ギャラリー4GATS/東京
2015   化体説−静物による ギャラリー現/東京
2013   Unbound: Possibilities in Painting 現代ハイツ・ギャラリーDEN & .St/東京
        Still Life & Natura Morta ガルリ・ソル/東京
2012   ルクレティウス 藍画廊/東京
2011   Various Skills vol.3  平田星司 展 トキ・アートスペース/東京
2010  干満な反復 現代ハイツ・ギャラリーDEN/東京
2009   reawake   ギャラリー現/東京
2008   界面  藍画廊/東京
2007   赤と黒 ガルリ・ソル/東京  
2006  静かな広場 ガルリ・ソル/東京        
2005  シンポジウム ギャラリー森/三浦市 神奈川 
2004  その手の話 藍画廊/東京
2003  紙の家 新宿区立区民ギャラリー/東京
2002  残されるもの/ Leftovers 藍画廊/東京
2001  1つの部屋に、1つの絵画。 藍画廊/東京
2000  マイナスの絵画 藍画廊/東京

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